水喰み Ⅲ
木立 悟





窓の隙間に浮かぶ手が
静かに夜を舐めている
灯りの無い窓の連なり
指だけが光を反射している


ひとつの入口に
花はあふれ
入りきれずに
花はこぼれ


束ねる音
放つ音
風と帆船
打ち寄せる蒼


全方位にやわらかな
冷たさ
つま先の広さに立ち
泣いている羽


空白
行方覆う鉄の火
空白
地の手に触れる空の手


入口に入りきれない花はかがやき
積もり 重なり 枯れることなく
水に浮かぶ水の静けさ
花を見送る光の水紋


しあわせな夢を
忘れては泣き
流し流されるものの行き着く場所に
終わらぬさざめきとはばたきを見る



















自由詩 水喰み Ⅲ Copyright 木立 悟 2018-07-29 20:31:03
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