曇の日
木立 悟
人工の丘を埋める鳥
どこか似ていて異なる羽音が
溝と水面に響いている
瞳から現われ 発ちつづけるもの
どこまでもどこまでも向かうもの
手のひらに生まれる光の群れ
丘の上の鳥たちを真似ている
雪から雪へわたる羽
風の隙間を動く景
小さく小さく去るものに
小さく小さくうなずいて
さくりさくりと幌の陽を踏む
巨きな羽を持つ巨きな手
曇をゆっくり混ぜている
生まれ落ちた火
生まれ来る午後
曇に言葉のかたちを映す
蒼をめぐる鳥たちを
視線のかけらが追っている
にじむ陽と曇のつらなりと
丘をすぎてゆく小さな音
空へ向かってひらかれた
景にふるえる手のひらのなか
光は近づく雨を歌う