満月の夜でなくても
HAL

服従は自由の敗北ではないときみは言う
何も考えなくていい
何も決めなくていい
それは重荷をひとつ減らすことだときみは言う

支配されることも同じだ
言われるままに動けばいい
逆らうことなく従えばいい
それは生の苦しみに悩まずに済むことだときみは言う

ぼくも何かに服従していないかともきみは問う
そして何かに支配されていないかときみは問う

規律とか戒律とか秩序とか倫理とかに
きみもぼくも縛られて生きていないかと

きみがそう決めつけるのはその方が楽だからだ
自分で決めない方が遥かに困難ではないからだ

自由はいつも弾圧を母として尊ばれる
自由はいつも抑圧を父として生まれる

きみの言う自由の上に弾圧はあるか
きみの言う自由の上に抑圧はあるか

ないと言うのならそれは野放途に
勝手気侭に生きているだけだ
それをぼくは自由とは呼ばない

自由のなかにも不自由があるだろう
不自由のなかにも自由があるだろう

善人が悪を為すときもある
悪人が善を為すときもある

この二律背反をきみは知らないだけだ
それが当たり前のことに無知なだけだ

ひとつの恋のなかにも善もある悪もある
自由も同じだがそうではないというのは善悪の否定だ

世の中はお伽話ではない
勧善懲悪の物語でもない

もしそうなら生きていくことを
だれも辛いともしんどいとも言わないだろう

真摯に生きようとするひとは
すでにそれを知っているから
今日は不自由で明日は自由になり
陽が昇れば羊となり陽が沈めば狼になる
自由を求めて 別に満月の夜でなくてもね


自由詩 満月の夜でなくても Copyright HAL 2018-07-23 22:36:20
notebook Home 戻る  過去 未来