あたらしいマニキュア
万願寺

ね、ね、ね、偏光パール。乳白色。液体のなかなぜかイルミネーション海の色をしているそうなの。ひまわりだって黄色と茶色と緑ですぐにだれでも言語にするのに、こんなの再現不可能じゃない。じゃない。こういう色を造り出すのは科学者じゃなくて職人じゃなくて女の子の仕事。こころのなかの女の子を殺せなかったおおくの人人の記憶、指先をつたう。巡って動脈かえって静脈それはしたたり青息吐息、試行のすえに、競合のすえに、広告のすえに、輸送のすえに、何時かはやっと、爪の上に乗れるといいよね。おしゃまな液体たちは工場でよなよなお喋りするのか、ぎんいろの冷たい皿の上で、乾きゆくあまたの白色たちは夢なんか見ない。かれらは夢を見せるため、少女のこころを守るため、土や岩や空気や水の中からやっと掻き集められてくれた変態性。献身?いいえ、なりわいなのです。それを知らぬは人間ばかり、人間ばかりが恋をして、恋をできずに、恋に破れて、恋を嬲って、恋をずっと捜したりする。みんなの恋は決まっているのに、人間なんて自分でろくに、生殖できない奴ばかり。でもいいんです、かれはかのじょはわらって揺れる、わたくしどもが、生まれるは恋の証です。海の色映し乳白色は、いまさらながらに爪が色づく季節に降れる、恋に恋しない恋の色。人間様はきづかなくても、しずかに凪いで、無風の瓶から、世界にひらけ。こんにちは。あなたが愛をする時のため。


自由詩 あたらしいマニキュア Copyright 万願寺 2018-07-23 01:49:35
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