ソリチュードのもつれ
ホロウ・シカエルボク



おぼろげな夢のなかで
おまえは踊りはじめた
おざなりなワルツのプロローグ
おぼつかないステップの羅列

金属のような月明かりが
照らす板張りの床のうえで
同じリズムが何度も、何度も
古い記憶の扉をたたくみたいに

ソリストは孤独を紡ぎ
真夜中は沈黙を雄弁にする
置きざられた楽譜は隙間風にめくれて
もう二度と火照ることのない旋律をあらわにする

セレモニーは終わった
聖杯は床で砕け
酒瓶はすべてからになった
ひとしきり声を昂らせた連中は拠り所をなくして
人知れぬ罪人のような後ろめたさを見せながらいずこかへ帰って行った

陽に焼けて色褪せ、ボロボロになったカーテンが
傷ついた女のように窓枠に寄りかかっている
ひび割れた薄っぺらいガラスは
いつか共にする終わりを知りながら
そいつを静かに受け止めている

血が通わぬものたちだけがあげることの出来る泣声がある
それを見つめている時におれは
どのような言葉を並べるのだろう

柱時計が記憶の時を打ち
振動によって長針が
なにかを思い出したように、揺れた



夢は目覚めると
夢ですらなくなってしまう




自由詩 ソリチュードのもつれ Copyright ホロウ・シカエルボク 2018-07-21 23:41:45縦
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