ビルにはもうみんな名前があって
はるな



アイスクリームをうる夢をみた、のきなみリンク切れの窓をかきまぜる、みんなどこに行っちゃったんだろう。
とおもうわたしの足もとも流れて、みんなどこに行ったちゃったんだろう?でもお元気で
なんて思わない。日々は土色だったよ。うつむいてたしよく転んだし、そうじゃなくても蹲ってたし。日記を書きつづけてね。見せてね。水草みたいにたよりない腕、右側が海で、左側が山で、あなたは背中
みんなどこに行っちゃったんだろう。
世界はあつくなりすぎだし、金魚はすぐ死ぬし、鉢植えだってかりかりに乾いて、わたしは花を束ねてる。まさか花屋にいるとは思わなかったけど、ここはすこし墓場に似てる。まいにち捨てる沢山の花と葉っぱと溶けた茎、すぐ錆びるはさみとどうしても傷のつく両腕、あせだくになってくろいバケツを洗う。みどりのオアシスをみながら、あー、みんなどこに。って考えるよ。裏庭でこっそり育ててるあじさいのはっぱ。
空があかるくなってきたよ。朝はなんで青いの?質問にこたえてよ。死んだり消えたりする友だちが、ふつとあらわれて煙草をねだってくる。だから火の予備もあるよ、溶けないで、質問にこたえてよ。
(そう、)窓、壁、扉。(脚が痛いかも。)開けて、とおもってた、開けて入ってきてっておもってた、ドアノブも引き手もない窓、扉、そして壁は脆弱。ちぐはぐなこの部屋がどこにあるかなんて気にしたことなかった。水がはいってくるよ
さびしいよ、空がもうむらさきで、それはきれいなんだけどうすっぺらいよ。からだのかたちの冗談をして、いつまでも遊びたかった。言葉が思考と手を繋いで箱に入ろうとする。だめだめって止めたいんだけど腕がのびない。このきゅうくつな体のどこに、文字をいれたらいいのかな、ビルにはもうみんな名前があって、街には所有者がいて、だから世界に逃げるしかおもいつかなくて、みんなどこに行っちゃったんだろう。


散文(批評随筆小説等) ビルにはもうみんな名前があって Copyright はるな 2018-07-14 04:25:46
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