海蛇
闇道ナツ

夏夜の浜に打ち上がる  それが
切っ掛けとなり
左の膝の人面疔が 嗤い出し
グズグズと腐乱して崩れ落ちた

剥き出した膝蓋骨しつがいこつを裏返せば
フジツボがびっしりと固着している
病巣には 濡れた黒い薔薇のような
浚われて また肉を充たすように
打ち寄せては重なり合っている
嗚呼、それは全く

革新するために
内部を さらに抉ると
鷲掴みに引き摺り出す  それは

手の中で胎児となり
屈折した私の足の その頂点は
血を湛えた盃
溢れくる衝動は
飲み干すより他はない

擂鉢状の噴火口さながら
その底で血を滲ませながら
暫く燻り続けた
激しい痛みをともない
私は赤子を抱くように
胸元へ膝を引き寄せ 覗き込む
すると
血溜まりの底から
隆起する肛門が露わになるのを見た

それは青く
放射状にさらに深い青で 筋が
犇めき合っている 
中心は 今にも排泄せんと蠕動ぜんどう
夜を包摂して 球体となった
その黒真珠を
蛇のように 私は飲み込んで
そして
左目が潰れて
やがて右目もそのようになった

もうすぐ あの日と同じように
締め出されて
イヤ、チガウ

世界の終わりだ
闇を裂いて捕縛されるのなら
穿たれたまま
深海に生き延びて
狡猾にも 四肢を放擲し
道もない場所で
私は



自由詩 海蛇 Copyright 闇道ナツ 2018-07-12 02:56:57
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