汽水域
なけま、たへるよんう゛くを

霧が濃い夜だ洪水だ 月光浴をしよう
仲違いしたままの あの 友だちの雪像のこと考えよう
遠慮は要らない リップサービスは化粧室で落としてきて
誰も見ていない筈だ 何も見えてはいけない筈
偽史の末裔が あちこちに棒立ちに 寄る瀬なく突っ立つ
何が楽しくて生きているのと たぶん問うている

道行かれのいちいちに

貧しいすっぽんぽんの差し出した水瓶に 注ぐものがなくてお月様も困り果てる
いい加減な光加減に替えて うっすらとまぶしたものは無知か

淡い 淡いよ この後には何も残らない
ぼやけた街明かりが呼び水となってそこへ 揮発して 人の心は染み出していく

脳裡にいつから潜んでいたんだ 見覚えのない面影だ
土台勝手に棲み付いておいたくせに 断らずに出ていけ
いいよ忘れて忘れて 不覚不覚深あく
一帯大きなひとしずく 見張りの前でも堂々と泳ぐ
見つかるのは明日が来てからでいい 明日見つけるからいいさと
そいつの方でも思った


自由詩 汽水域 Copyright なけま、たへるよんう゛くを 2018-07-11 01:37:31
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