海街
ヒヤシンス


 さっきまで明るかった空が暮れてゆく。
 家路へと急ぐ人達に紛れ込み、今日も一日が終わろうとしている。
 暗がりの中、明かりが灯された電車の中で私は孤独だった。
 誰かと話したい訳ではなかった。

 気の変わる人達に疲れていた。
 もしかしたら自分も?
 鬱々とした気持ちで車外の風景を眺めていた。
 刻々と変わる風景に何故だか心がざわついた。

 新鮮な空気が必要だ。
 突然眩暈と吐き気に襲われて次の駅で電車を降りた。
 ベンチに座り深呼吸すると仄かに海の匂いがした。

 森が好きなはずなのに悲しくなると海を見たくなる。
 湧き上がる懐かしさの中で足元が濡れていた。
 元居た場所に帰りたくはなかった。


自由詩 海街 Copyright ヒヤシンス 2018-07-07 06:38:13
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