題名を付けられたくない二人
ただのみきや

君が君とはまるで違う小さな花に水をやる時
じょうろの中に沈んでいる冷たい一個の星が僕だ
ビー玉越しの景色を一通り楽しんだなら
必ずベランダから放ること すべて朝食前に
僕の口笛が余韻を引いても無視すること
飛び散るイメージの破片で手を切らないように
タネも仕掛けもある恋をひと時の盲目が覆う
祈るような面持ち 蜂蜜とレモン 絡まる舌
世界はシースルー でも裸じゃないから
本音で生きても決して本音は口にしないこと
蝶を千切っても蝶を千切ったと言ってはいけない
愛しても愛しているとは言わないこと
流れ出した息の中ふつふつと芽をだして
蔓捲く一本の草木となった君の形のないよすが
金色の囁きでいつまでも産毛を揺らすように
夜には地下の水脈に唐突に落ちて来る
僕が盲目の剃刀でいられるように
いつも何かしらの笑い声がはらはらと散って
双子のような寂しさにふたり苛まれるように




          《題名を付けられたくない二人:2018年6月30日》








自由詩 題名を付けられたくない二人 Copyright ただのみきや 2018-06-30 20:55:40縦
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