すぎる ゆれる
木立 悟





水の悲鳴と
鐘の音が重なり
どこまでも
眠りを遠去けてゆく


骨と木と岩
蒼い火を吹き
砂と浪を照らしながら
海のかたちを描いている


白く広い風景に立ち
白髪の角を振りかざす
光は二重の薄い枷
行方をふさいでは消えてゆく


奇妙に明るい蒼夜から
繋がれた馬に降りそそぐ雨
田舎道の血は洗われ
イーゼルの脚元に流れつく


双頭の馬が曇を昇る
屋根の上の煉瓦の鳥
荒れ地も墓地も
空の端から昇りはじめる


真昼の空の 蜘蛛の花
二つの時間 空洞の浪
少し離れた扉の隙間を
遠く明るく雨はすぎる


白い壁の種痘を結び
星座を創る小さな手
音だけの水を追いつづけた
二十分三十四秒の夕暮れに



















自由詩 すぎる ゆれる Copyright 木立 悟 2018-06-17 21:37:06
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