ねがいごと
小夜

たったひとつ
ねがいを
きいてくれるというのなら
わたしが生まれる日に
むかえにきてください




病院から
おおきな荷物と
見慣れぬ我が子を
抱えていく
母の
かえりみちを
抱えてしまって

それから
ずっと
みちに迷っている




母の生みのたたかいが
母のものでしかなかったのは
父の生きるたたかいが
父のものでしかなかったから
それとも
逆か




いまどこかですこしでも
やすらいでいるというのなら
いったいどこに
かえったのですか


どれほど
間に合いたくても
ておくれにはきりがない
ならば
生まれるまえに
ゆるしたかった



ねがいごとができました

やっと
ねがいになりました




わたしの生まれる日に
むかえにきてください
くらがりからまっしろな
せかいへ落ちる瞬間を
そのいりぐちで
みとどけて


そうして
かえりましょう
わたしたちになれるばしょへ
いっしょに


自由詩 ねがいごと Copyright 小夜 2018-06-14 18:47:49
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