花嫁
ヤスヒロ ハル

美しい花の名が
記憶の書架にある

わたしは優しさを
はき違えないように
静かにそれに水を遣る

いつか
涼しい雨が六月を撃っても
梅雨色の萼に思い出を結わこう

むすめよ
わたしのむすめよ

忘れないでくれ
わたしのいた日々を

わたしの手が
あなたのつむじより
遥かに大きかった頃を

一緒に歌ったうたを

出掛けた日の空を

食事とその時の笑顔を

今、わたしは
ひとり歩いている

暖かくにじむさみしさに
傘をさし


自由詩 花嫁 Copyright ヤスヒロ ハル 2018-06-13 11:38:23縦
notebook Home 戻る  過去 未来