遣らずの雨
木村きむ

全て抹消せねばならぬ
踵の靴擦れが決定打になるやもしれぬ

アクセサリーを外し
服を脱ぎ捨て
下着だけになる

全て抹消せねばならぬ
レシートは全て処分した
鍵のかかったスマートフォンが鳴るのを待っている
次に鳴るのは告別式への招待だというのに

全て抹消せねばならぬ
一口飲んだだけのペットボトルも廃棄せねばならぬ

先程までの感触を思い出しながら
アルコールを胃に流し込む

全て抹消せねばならぬ
全て
全て


塗れた雨傘はどのように処理すればよいのだ


自由詩 遣らずの雨 Copyright 木村きむ 2018-06-12 15:42:57
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