コーヒー
オイタル

立て続けに何杯も
水を飲んだ 若い頃は
いつも
だがもう
そうはいかない
コーヒーを入れる時間が わたしの
呼吸の長さである
いつもの あなたのように
コーヒーメーカーは たどたどしく
咳き込んでいる
立木の 豊かな緑は
風にも動かない

薄いコーヒーが
うまいと思う
やがて 仔犬が
やってくるのでは と思う

隣家の二階のベランダ越しに
小さな入道雲が
泡立っては消える
黄色い花冠の窮屈に咲くところから
まばらなところへの
グラデーションに 見とれる

窓のごく近いところを
小さな鳥が
横滑りに逃げ去る
わたしの心臓に
この上なく近いところを

立て続けに二杯
コーヒーを飲んだ
チョコの紙カップを 
外して 舐めた
二杯目のコーヒーは
苦い
わたしは夕暮れへと
風の騒ぎ始めた夕暮れへと
ゆっくり 立ち上がる


自由詩 コーヒー Copyright オイタル 2018-06-09 14:43:13縦
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