ホトトギスの木
ただのみきや

道路が出来て分断されて
この木は孤独に真っすぐ伸びた
辺りの土地が分譲されて
真新しい家が茸みたいに生えてくると
繁り過ぎた木は切られることになった
ざわざわと全身の葉を震わせて
震わせて木は ただ立っている
六月にしては暑い日だった
太陽の斧が振り下ろされて
影はすでに静かに倒れている


ホトトギスが一羽
このごろは居座っていた
身を擦り寄せるようにして
てっぺんかけたかー そう
鳴こうとするが
舌が回らずにどもってばかり
言いたいことが言えなくて
鳴けども泣けども伝わらない
心を鎮め 想いを込めて
木の葉に隠れて叫んでみるが


応える声も仲間もなく
暑さに唸る蝉ばかり
ホトトギスの言葉は解らなかったが
木には それが
声のない自分の心の声に思えた
日の光も届かない懐の奥深くから
悲しく 苦しげで どこか陽気で
訴えるような節がある
自分が歌っているのだと思った


鳴かねば殺すと言うのなら
鳴いてもいつかは殺される
不愉快だからと我慢がならぬと
被害者面して殺すのか

鳴かせてみせると言う者は
鳴きたくなくても鳴かすのか
騙して脅してお世辞を言って
拷問してでも鳴かすのか

鳴くまで待つという者は
鳴いたら最後やって来て
自分の手柄と言うだろか
自分のものだと言うだろうか


何十年も前のこと
雑木林を削り道路は出来た
こちら側に一本
孤独に真っすぐ伸びた木は
今日 切り倒される
全身の葉が細波立った
懐深くホトトギスはやっぱり
言葉足らずの舌足らず鳴けども泣けども
蝉たちは無表情で読経を続ける
業者のトラックがいま到着した




              《ホトトギスの木:2018年6月6日》










自由詩 ホトトギスの木 Copyright ただのみきや 2018-06-06 19:57:26縦
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