クーデター
ミナト 螢

カッターの薄い刃を腕に当てて
林檎の皮剥きみたいな技で
赤い血を見れば生きた心地する

人に優しくできない私も
同じ赤い血が流れていること
誰かが反対をしたとしても
少しは誇りに思っていいよ

君が押し上げた体温のように
透明な水を欲しがる瞬間
何も言わずに包帯を巻いて
それが愛ならば充分でしょう

制服の袖も切りたかったけど
醜い傷跡を隠すための
白い羽根だから綺麗に残した

突然やってくる不安の前で
カッターを握らなくなる代わりに
バターナイフで食パンを塗った

トーストを焼ける余裕があれば
いつか君にだけ食べさせてあげる


自由詩 クーデター Copyright ミナト 螢 2018-06-01 15:34:47
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