さらしもののうた
秋葉竹



なやみがひとつもなさそうなセンスで、
女は笑うんだ。

冷たくさえみえる
冴え冴えとしたシャフト立ちの
ゴーガンフソンな片頬笑み。

まるでたった1枚のアニメのセル画のような
貴重な宝物のような女。

まるで世界の静寂が染みわたったかのような
動けない優しさが支配する部屋に
女の欲望をかたちづくるためだけの時は流れ、流れ。

叫べども聴こえない、私の絶望は
嵐のなかの、コップの水を、
ひと息に飲み干す、いさぎよさで、
忘れなければ、と、努力をするんだが、
満足はしても、愛されはしないさ。

一瞬、
禁欲主義者の見透かされた絶望と
勘違いをされそうになるが、
そんな、ややこしいものなどではない。

眺めて、眼と、心の眼が、安心する
愛のかたちをみたもの、だとか?

クチビルのかたちはちょっと色っぼくてさ、
こちらからは、下心が、突き刺さった
あの大仰な女の日々の復讐が、私を指名する。

ドラマチックな
危険な想いを野ざらしにして、
傷つき、流血する日常を
認めたくないこの心のすでに老いた未来を。
要領よく生きてしまって、
すべてを受け入れる簡単さと、
いつまでも挑みつづける寂しい思い出を。

それぞれ、一心不乱の通り道として受け入れ、
ときに触れてはいけない哀しみが目元に吹きつける。

ただ、冷たい心の在り方を
受け入れ、受け止め、受け流す、
私はえいえんにあの女にこだわることだろう。

いいえ、ごめんなさい。
言葉を飾ってしまったわ。
私、いつまでも、死ぬまでも、
あの女を愛しつづけることだろう。
ええ、どんな白い眼でみられても。
その、不毛で不憫な愛ゆえに、
さらし者に、されたとしても。








自由詩 さらしもののうた Copyright 秋葉竹 2018-05-31 23:17:13
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