シャープの最後
竜門勇気


長いこと
閉じ込めてきた
それはもういつの話?
あやつり人形も
願いの叶うネックレスも
それをそれたらしめてた輪は破れて
賭けた鍵なんか一つも残ってないのに
閉じ込めたあいつは出てこない
プラスチックみたいな黒い猫

ある日思い立って
ドアノブらしきものを掴む
朝ごはんを食べなかったから
こんなつまらない事を思いつくんだ
なにか自分でもわかることを
なにか一つでもわかりたかったんだ

甘い物
戸棚の中の乾いたケーキ
ここにも君の残り香が
吸い込む前にわかるふりをする
嗅がなくても見える
見る前に知っている
閉じ込めたあいつはここにいた
ずっと前にね
プラスチックみたいな黒い猫

あの骨は君じゃなかったかもな
生き物の骨なんて
みんな白いものだし
牙なんて誰のだって尖ってるもんさ

あの毛並みは黒くなんかなかったもんな
薄く灰色がかってたし
プラスチックみたいに光ってなかったし
なによりあたたかくなかったし



自由詩 シャープの最後 Copyright 竜門勇気 2018-05-26 01:19:06
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