架空の街
そらの珊瑚

雨は降りやまない
けれど
雨音は音符に変換されていくから
赤子も子燕もやすらかに眠る

雷は遠く くぐもって鳴り
狙い撃ちされる心配はいらない

流れ星のいくつかは
蛍に生まれ代わり
籠の中で光る
「兄さん、よく光るね」
「ああ、これがいちばんよく光るよ」
兄弟もまた架空の繭の中でヒカル
点滅は
ないということと
あるということが
背中合わせに存在し合い
はかないことの証しになる

ときおり雨は赤い
それは空が傷ついた証し
遊園地の馬を錆色に染める

夜行列車の行き先が明日だと
誰も信じて疑わないのは
なぜなんだろう

操車場に ひらり揚羽蝶
わたしもひとり
汽笛の粒がなくなるまで見送る


  ※会話部分は小川未明「海ぼたる」からの引用です。


自由詩 架空の街 Copyright そらの珊瑚 2018-05-23 10:06:33縦
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