車窓から見える風景
秋葉竹


のどかな田園風景ではない。
土にまみれて、
雨とたたかい、
繰り返す日々の暮らしの中で、

土と語り合ったか?
雨の機嫌を知ってるか?

のどかで、おだやかな、田園風景でもいい。
初夏の汗ばむ燦々(さんさん)とした貴女の、
太陽よりもまぶしい笑顔が見られるなら。

僕たちは、
お互いがお互いを理解しているようで、
ホントは僕がかってに
憧れていただけの一方通行でしたね。

だから、僕は、田舎なんて
大嫌いだったけど、
貴女の言うがままの、
田園風景を眺めていたのですけれども。

現実の農作業ていうのは、
ちょっと、単調で、きつくって、
身体は、すぐに悲鳴をあげるし、
気持ちは、すぐに萎えるんだ。
汚れるし、臭いし、腰が痛いし、
僕なんか、若かりし頃ちょっと手伝っただけで、
イヤダ〜、って、思い込んでしまいましたよ。

ほら、旅行者にとっては、
なにもかもが、新鮮で、
いちにち体験って、
けっこう心を洗ってくれるよね?

貴女の言うことも、それでしょう?

のどかな田園風景を、みたい、って。

ホントは、そんな平和な田園風景って、
現実のどこにも存在しないんだけど、
夢を夢として、憧れるのが、
悪いことだと言い切れる人って、います?

ほんとうなんて、関係ないんだ。
車窓から見えるのどかな田園風景には、
白色や黄色の蝶々が、ゆらゆらと
行くあてもなく、飛び交っていることだろう。

そんな、
ほんとうかどうかもわからないけれども、
そうあって欲しい風景を思い浮かべて、
トンネルを通るとき浮かぶ
窓ガラスに映る僕の顔と、
盗みみるように覗く貴女の容姿が、
光に吸い込まれては、吐き出されて戻って来る。

そして、
トンネルを抜けるとそこには、初夏の、
のどかな田園風景が、待っていてくれるだろう。








自由詩 車窓から見える風景 Copyright 秋葉竹 2018-05-22 03:48:01
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