過ぎていくものたち(nine story)
空丸ゆらぎ・続

 1

夏の陽射しに
笑いながら
水が流れている

ひざっこぞうを陽にかざし 飛行機雲を一本ひく
西瓜の種をどこに飛ばそうが自由だった
あの頃はどうでもよいことなど一つもなかった
遊び疲れた子どもはくるくる回りながら子宮に帰る

何人かの思い出の中にぼくがいて
適当に処理されているのだろう
白黒の縁側で笑っていたい

世間に私を預けたくない
 石を積む
 夜が続く

  2

もう少し左に寄ってください
行き過ぎです 少し右に戻ってください
世界は偶然と情報 そして共鳴
覚悟と成り行き
はい そこでいいです
その感触は時代と一致した気がしたのだが
写真に納まったぼくは
なんか 普通だった

  3

    初夏の休日
    太陽が東から西へ弧を描く

    ただ無駄に
    宇宙が広がっている

    岸壁に立ち
    あの軍艦も
    余計だ

知らない街を歩く
足音高く 但し気付かれないように
恋の始まりのように
戦場のように

梯子を上り続け 雲を抜け 成層圏で立ち止まる
今日はそんな一日だった
歩道を歩く自分の姿を思い描きながら・・・
街並みは遠近法に従っていた

  4

地球が太陽を一回りし、
年が明けた。
僕の周りは冬で、 
どうすることもできない。
 
日常とは多数決で決まるのだろうか
同化するな
排除するな
ノートを開くと雨
思わず閉じる

バス停は雨が似合う。
男と女が夜を待っている。一過性の物語。

  5

朝は あっけらかんとしていた

どこから来たわけでもなく
どこへ行くわけでもなく
車窓は、都会から田園へ
田園から森林へと深みにはまっていく

主語は世界を分断する
名前のない街で夜を迎える

この世界の「あとがき」を誰に託そうか

   *

あの時そうしなかった人生が続いている。
開けっ放しの明日は安住を許さない。

  6

私をデザインし
街角に私を置いて
景色を変える

沈黙するだろう
公園のベンチのように
私は無題でありたい

人生は散歩だ
朝が聞こえる
あの辺りから聞こえる

  7

  世界を確かめ合うように

世界はどうしてか在る
向こう岸には行けない

唇をかさねる
何度も何度も 深く深く


  どうなることやら

錆びついた鉄骨の街は一掃された
遺伝子を切り貼りし新しい人間が街を歩く
高分子構造の服を纏い風を横切る
虹を眺めるロボットたち
  

  無常 

世界は変わる どう変えるか 
僕はどう変わるか
「静止画」でいたい
時々そう思う


  5月

春でもない夏でもない
そのいい加減さが肌に合う

  8

退屈だったので
陽が沈むのを見ていた
大地が静かに回っている
街が赤く焼けていく
もう二度と取り戻せない
無力だ

あれは 金星だろうか

     空き地に風が抜ける
     街は流れている

今日のことも 明日のことも
どうでもよくて ただ眠りたかった
風は冷たい

     柱時計とか
     廃棄されたエアコンとか
     積まれた新聞紙とか
     傾いたベビーカーとか

  9


 寝たと思ったら もう朝だ
 雪が積もっている

 姫はなぜ小さくならなかったのか
 一寸法師は 駅前で立ち尽くす

 救世主は降りてこない
 そのかわり五時の鐘が鳴る

 理由もなく一日が終わる
 だらだらと文字が 言うことを聞かない



あれやこれやの日々の暮らしの中に普遍はありましたか
この朝にはまだ名前がない

日照り続きでも花は枯れ
水をやりすぎても花は枯れる
足跡を残すために砂浜はあり
足跡を消すために波が追いかけてくる








自由詩 過ぎていくものたち(nine story) Copyright 空丸ゆらぎ・続 2018-05-18 19:16:49縦
notebook Home 戻る