蛸の触手は【悪魔の舌】か【天界の下】か
るるりら

闇にすっかりなれたのか
それとも 朝がきたのでしようか
あまたの光の柱が 
行間からまっすぐに 立っています


言葉は 今朝の朝靄のように低い場所に流れます
 言葉が 祈りとはかぎりません限りなく
  言葉は あてどないない旅をしつづけます
   言葉は あの日の煙のようなものです 高い場所にも登ります
    言葉は きな臭く饐えて息も絶え絶えに吐かれて それでも
     言葉と言葉のあまたの行間のすべてから きんいろが現れ
      言葉は 光柱をすりぬけ家屋の床下にも届きます
       言葉を もぐらが みみずが 聴いています 
        言葉が 床板と床板の隙間にも降りていて眩しいのです あくまで
         言葉が 悪魔の舌にも光を運びます 闇の中が一番光を感じるのです
          言葉の悪戯な足跡に ふるえてるのは だれですか
           言葉が 暗闇を欲するのは 光のせいです 
蛸を 目の神だと言って ある男は 生涯、蛸を口に運びませんでした
男には娘がいました言葉のすくない男でしたが 蛸を舟の上でたとき
男は蛸と 見つめあい言葉でない言葉で、会話しました
医者は 娘が失明すると言っていたのです 男は まんじりと視線を離さない蛸に
どうぞ娘の視力を奪うなと言いました 言葉ではない言葉で男は蛸と約束しました
生涯 蛸は喰いませんからと言いました 娘に多くのモノを見せてやってください
娘に 光がありますようにと 言いました 蛸は目の神様でした
蛸は様々に身をよじり見据えて 言葉を超えて、男の心の奥底を見ていたのです
網に掛かった蛸を神だと感じている言葉には 力がありました
大海原に放たれた蛸は 凧のように 言葉で天界と下界を 自由に泳ぎ歓喜し
娘にそして 私自身に光が与えられて 言葉で 誰かとなにものかがいたる場所で結ばれ
闇の中でこそ かすかな光の音が生まれ
輝かしい鐘として鳴り響く 今、 まさに


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【petit企画の館】/蝶としゃぼん玉での企画【祝言】として書きました。
該当コーナーと 内容が多少ちがってます。 ご愛敬として 手作り感覚の経緯も残してみました。https://po-m.com/forum/thres.php?did=320890&did2=670


自由詩 蛸の触手は【悪魔の舌】か【天界の下】か Copyright るるりら 2018-05-13 01:20:47
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