ひとつ 常光
木立 悟





街の廃墟に
ネオンだけが点いていた
残された無数の足跡に
波があふれ 消えていった


人々は荒れ地を進んでいた
空を覆う霧には
ここで終わる
と書かれていた


追いかけても追いかけても
追いつかない曲がり角の影
水の底の星雲
背 風 真昼


飛沫の羽
壁に描き
途切れては再びはじまる径
鉛の水に塗られた径


突き放しても突き放しても戻る光を
さらに突き放して見えてくるのは
街を切り抜く亀裂のかたち
顔を持たない巨人の横顔


見えない自身を見ようとして
子らは鏡の前で廻りつづける
きりきりと
真昼は午後へ冷えてゆく


終わりの先へ向かう背を
まばたき無く見つめる霧
花は巨きすぎる手にかすりもせず
街を沈めた水に落ちる


















自由詩 ひとつ 常光 Copyright 木立 悟 2018-04-26 08:16:27縦
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