葉桜の数式
田中修子

やがて宇宙が滅びることは数式に証明されちゃったらしい
終末のラッパはとっくにわたしの中に高らかに吹かれてた

人も言葉もすべては星の爆発の灰燼に帰すのかしら

いえ、きっと
書かれた人読まれた人の
記憶も燃えて粒子になりチリチリと散らばって
あらたに構成され再現される日がくるのです

新宇宙の入学式

元素記号の美しく強い組み合わせ
目のまえのお酢 や さく酸が CH3COOHならば

花は葉っぱはいったいわたしは

夜ごとの星がおしまいの記憶なら
じつはいまここにいるわたしが
かなしみにくるしみによろこびにやけついたオバケでないこと
だれか証明できるのかしら ああ 危うい指

机の指紋、言葉つらねたノートよ

パラッ ラッタッター

あざやかにインターネットごしにあなたの
疑似科学的な記憶細胞に
欠片として散らばるわたしは

ああ 入学式にはたいてい散ってしまっているの
桜の花びら


自由詩 葉桜の数式 Copyright 田中修子 2018-04-23 22:58:18縦
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