壁紙
まーつん

壁紙が剥がれ落ちていく
鱗のように、枯葉のように
ポロポロ、ポロポロと
私は何になりたかったんだろう

その答えは
崩れゆく壁紙の向こうに
隠れているのかも

男はじっと立ちつくしている

跳ねた髪に無精髭、
汗で黄ばんだ縞のパジャマ
見開いた眼で壁を凝視する姿は、
まるで囚人のようだが
多分その解釈で間違いない
そしてもう一つだけ言えるのは
なにかが潮時に達しているという

唯それだけのこと

ベランダのインコが一声鳴いた
昨日見たときは、死んでいたのに
籠の底に可愛く横たわって
羽の朱色が熱かった

なにか
言葉をしゃべったようだが
気にしなくていい筈
唯の物まねだろうから

物まねといえば私もそう
人の後ばかりついて行き
いつしか迷子になっていた

誰かのように愛されたくて
誰かのようにふるまっていた
それはもちろん愚かなことだ

壁紙が剥がれ落ちていく


自由詩 壁紙 Copyright まーつん 2018-04-13 11:04:12
notebook Home 戻る