祈り、ただ、このちいさなもの達の為に。
秋葉竹


知ってたつもりだったけど、
ほんとうは、知らなかったんだ。

みんな、ほんとうに、蛇が嫌い、なんだ?




蛇が消えた。

戻って来てくれと願う。

もう、無理かもしれない、

と、諦めかけて
だから、私は、もう祈るしかない。



白蛇は赤い眼で、 黒蛇を観察し、
黒蛇は鎌首を伸ばして、とぐろを解く。


部屋に残された空気に笑い声の欠片があり、
流れつづける川に夢のカクテルのあぶくがある。

すり抜けた青ガラスのコップが廊下に落ちたとき
落とされたガラスコップの傷が緩やかに割れて


染み渡っていく、
コップの水を
白と黒の蛇2匹は、
絡み合いながら、
眺めつづけている。
瞬きは停止し、
白と黒の蛇の
似た者同士のなれ合いと、
わかっているはずの
お互いへの不可解な怖れが、
ようやく、あきらかになり、

風に吹かれる。




白黒写真のなかに封じ込められた蛇は、
ピンク色の、
不似合いな夢を見ているだろうか?

どこへ、消えた、蛇よ?

森の海に迷い込んだ私は蛇を探して
黒髪振り乱して道無き道を駆ける。

愛の園に置き去りにされた私は蛇を追って
波のまにまに視える海ヘビを探しては、
むかしの蛇の写真と見比べている。




ただ、それだけのはなしだ、

あてなどないはなしさ。


ただ、歌を拾った。
心に、落ちていた。

(祈るわ、)
(ただ、このちいさなもの達の為に、)
(けれど、)
(私は、なにに祈ればいいのですか?)











自由詩 祈り、ただ、このちいさなもの達の為に。 Copyright 秋葉竹 2018-04-08 20:22:43
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