飛音
木立 悟




風は降る
粒は降る
重なり 離れる
鳥の像と鳥の影
円のなかに降りしきる円



雨どいの羽
空へ帰り
曇と返り血
はばたきの跡
ひらめく道の
切っ先の音



坂のかたちになだらかに
灰と雪は飛んでゆく
空と同じ色をした
荒れ地のむこう
冬の海
風と水のはざまを飛ぶもの
傷つかなければ飛べぬもの



蒼の手のひら
歩みひらめき
指の輪のなか
置き去られた月



灯から離れすぎたものにだけ
小さな光の譜は見える
集めては奏で 奏でても
はばたく傷は増すばかり
まばゆい音は増すばかり



飛沫の行方 空に問い
降りることを知らぬたましい
水紋をわたる霧雨の
数え切れないやわらかな棘
わたしを壊し
あなたを創り
せめぎあう小さなまれびとたち
わたしを奏で
あなたを歌い
飛び去る気まぐれなよろこびたち










自由詩 飛音 Copyright 木立 悟 2005-03-19 20:54:24
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