魂トロール
忍野水香

羊の群れに紛れ込む、一匹の山羊
和音の中に潜む、微細な不協和音

息を潜めるように生きてきた
いつの時代も調和を乱す者は
この世のあらゆる集団に於いて排除され
同じ制服を着用していても
決して順応することはなく
異端者として簡単に処分されるのだ

「自由 平和 博愛」などと
耳障りのよい麗句をスローガンに掲げるけれど
それは単なるオブジェに過ぎず
本音はいつも
欺瞞という黒いオブラートで包み隠している
支配者は1%の異分子に労力を割くよりも
99%の忠実なる奴隷を生産することに忙しい

柵の箱庭で放牧される羊の群れは
日常的に与えられる人工的な飼料を
来る日も来る日も無心に貪っている
例えば、その中に巧妙に仕込まれた毒とか
微塵も疑うことはなく

中枢をコントロールし、意志を奪い
従順に従うよう洗脳された傀儡となって
飼い主のために忠誠を尽くす

命の危険など顧みることもなく
無数の死体が転がる戦場で
最後の一人になったとしても
視えない敵に狙いを定め
自分が朽ちるまで引金を弾き続ける
本当の敵が誰なのかも解らず

その末路は
哀しくもあり滑稽でもあるが
誰しも自分が羊だとは
夢にも思ってはいないだろう
そうなのだ、気づいてすら、いないのだ

斯く言う私も
知らず知らずのうちに洗脳されている
憐れな子羊、なのかも知れないが


自由詩 魂トロール Copyright 忍野水香 2018-03-23 01:15:27縦
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