明日のテーゼ
ペペロ

霊的なこと以外は、妄想であったりふたしかなものだと痛感しています。
私が彼女と別れたのもそれに気づいたからでしょう。気づいたというか、確信したから。確信というより、思い出したから。
私は女の子が好きだけれど、彼女は私の事が好きだっただけで、女の子が好きな訳ではなかった。
私のことは妄想みたいなものだったのでしょう。
いまの気持ちにラインは合わないからメールをしたためようか。
社会的なことって強いよ。なにも風穴なんかあかないよ。
素晴らしい音楽や文学や哲学が世の中をかえたことある?
でもそれが生きている本懐です。
高校の校庭が水溜まりになっている。
私はなんにも考えないで教室からそれを見つめている。
高校時代、まいにち雨だったはずなどないのに、私のこころや記憶のあの頃は雨の校庭です。
色づくりに失敗してパレットにできた汚い色に、すこし白を混ぜたような雨の校庭。ところどころ土がながれて黒ずんだり、雨水が居すわってたよりない色になっています。
思考を停止させてくれる光景でした。教室は男や女や私や未来や暇でいっぱいでした。
考えたって答えなんてありません。どの道を行こうが問題は起こる。
霊的なこと以外、というか霊的なことが原因していることは、この世ではふたしかなのです。
彼女が食べたいと言ったから、お昼待ち合わせて鰻屋さんに行った。そろそろお腹がすいてきたのかな。なんか頼もうかな。そしたらミサイルや地震や放射能や、相変わらず派遣の身でがんばっていることを思い出した。
ひとって幾つも痛みを抱えられないのでしょう。
時間差?
ひとつの時間で複数の痛みを抱えられないだけで、今が過ぎればまた入れ替わり立ち替わり来るのかも知れない。
彼女が彼氏の息子を連れて改札口で待っていた。まだ幼稚園にもいっていないような男の子。
それから3人で鰻を食べた。二枚のせをふたつ頼んで彼女は男の子と分けあっていた。
店のひとに私たちはどう映っているのだろう。子供のいる妹と子供のいない姉というところだろうか。いや、そんなことはいちいち言語化していないだろう。
それから彼に頼まれたとかで、男の子の髪を切りに高島屋にタクシーで向かった。車中で予約しようとしたら、本日は満員とのこと。
それなら新国立美術館に行きたいと言うからそのまま行ったら休館日だった。
こういうことも別れた原因かも知れない。こういうことだけが手触りのある実感で、あとはすべて妄想のようなものだと思います。
雨がやんでどんどん寒くなってきました。
ガラガラのトルコ料理店で目の前にティーを置いて、街道を見つめています。
霊的なこと以外は、妄想であったりふたしかなものだ。
隣のお客さんに料理が運ばれた。わあ、おいしそう、上品そうなお一人様のご婦人です。
私はまた街道に目をやります。
桜の花が枝にまとわりつくように咲いているのが見えます。









自由詩 明日のテーゼ Copyright ペペロ 2018-03-21 05:51:22
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