黒の下のパーティー
佐々宝砂

跳ね上がる、湧き上がる、躍り上がる、
歌う、歌う、歌う、歌う、
躍動感にみちみちた空気、
あちこちに飛び交う音符の羽虫たち、
唐突に鳴るクラッカー、

輝かしい照明は目も眩む、白、
白のなかの白、
白のうえの白、
このうえない白、

狂い踊る色彩、
見えるはずもない遊色、
あるはずもない構造色、

そして鼻がおかしくなるような臭い、

石油の、泥水の、糞尿の、
揚げたてポテトの臭い、
腐った牛乳の臭い、
ひとすじ香る沈丁花のピンク、

ごったがえすパーティー会場の、
カクテルパーティー効果なんか効き目がない空間の、
音と色彩と臭いを、

とじこめる黒。

静かに、ひそやかに、
華やかなパーティーを封印して、
黒い謎が黒く四角く切り取られる。


         -------カジミール・マレーヴィチ「黒の正方形」に寄せて



自由詩 黒の下のパーティー Copyright 佐々宝砂 2018-03-18 13:29:12
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