其処にある指の跡
ムウ

小説の最後数ページ手前で
パタンと閉じて 深い深呼吸をする君
ボクはそれを馬鹿にして笑ってた

子供染みていて

もう一度 君は小説と向き合って
その馬鹿正直なその突き刺すような
眼差しにボクは撃ち抜かれた

でも愛はそこにあった

薄れた傷跡と色褪せた本だけが片隅に
開くたびに独特なでも懐かしい匂いが漂う
小説の最後数ページに残る

君の指跡

そこに指を重ねて目を閉じて
辿り着く先はいつもと同じ
何度も何度も何度も繰り返して

真っ暗なのに歪むスクリーン

小鳥が朝を出迎えていて
残り僅かなコーヒーと溢れんばかりの睡魔
拭いきれない後悔

今でもあるんだ 君への愛が色褪せずに




ボクはこの小説の結末を読めないまま


自由詩 其処にある指の跡 Copyright ムウ 2018-03-17 20:49:52
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