3月のキャンプ場は、寒くって。
秋葉竹


暗く静かな山の上の夜、
キャンプ場のテントを出て
なにも考えなくていいしあわせを見上げる。

25時なのに、気分だけは絶対青空のような星空の下。

それでも悪夢への眠りいざなう虫の声や
火をおそれる知恵なき小動物の気配は
この、人の造りしキャンプ場の、BGMだ、冷たい。

もう、ききあきた大量のそれら
山の先住民の小さな抗議を、
悲しむ心を持っていない気づきに怯える。

なぜ?

あなたは、天地万物のすべての悲しみを、
平等に聞いてあげて、
いっしょになって泣いてあげる
最後のやさしい人では、ないの?

そんなわけもなく、
ただ山は、山として、山を名乗るだけ、
ただ人は、人として、人を名乗るだけ。

もしそうなら、寒い。
急に、寒くなって来たか?

春先とはいえ
山の上の丑三つ時はいまだ冷たい風が吹いた。


そのとき、
私は、
星空を見上げながら、

小さい諦めを、
笑い、

深い暗闇の夢の中で、
鏡に映った、
私ではない、
美しい月を二度見した。

貴女は、だれさ?
私じゃないよ。


わたくし、ここに、おりますのよ?

『星』空と呼ばれた星『屑』のなかで
ひとり、満月もどきが、拗ねている。



はは、だれも見落としたりしないよ。
安心して、大丈夫だよ。

くだらない心配は、
早く西の海に、
沈んじまえ。



ほら、星が流れたじゃない?
それをあなたの涙というの?月よ?

忘れられない、涙を流したのは、
悲しみを超えられない運命を抱えた
このわたくしだというのに?


暗く静かな山の上の夜、
人の造りしキャンプ場で、
うるさいほど煌めく、
満天の星たち、はしゃぐ空、
下界に蔓延(はびこ)る陳腐な愛とか自由とか、
なにも考えなくていいしあわせを見上げる。

26時なのに、気分だけは絶対青空のような星空の下。


『明日も絶対、青空になれ!』

そんな祈りを、月に捧げる。
月を騙(かた)った私の祈りを、
月は、聞いて、くれるかなぁ?


自由詩 3月のキャンプ場は、寒くって。 Copyright 秋葉竹 2018-03-17 07:35:55
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