百年先で待っててね
青の群れ

あれから七年、今日も立川行きの快速に乗っています
いつだって反対側のホームに渡ることができるけれど
ルーチンになった行動に、諦めが付くようにもなる

あの頃を取り戻したみたいな窓から滑り込む沈丁花の匂い
ほこりを被ったストーブ

すぐにでも会いたかった人との待ち合わせの日付をときどき更新しては
会わない時間のほうがいつしか長くなった

悲しくはないけれど寂しいみたいな
言葉のニュアンスの違いもいつしかどうでもよくなる
今だってもう、劈くような胸痛は二ヶ月に一度くらいしか感じていない

わたしが吐いた溜息はそのあたりの木々が酸素に変えて
あなたの肉体は分解されて太平洋を泳いでいる

海に手向ける言葉がだんだんと短くなっていったのは
わたしや、あなたや、昨日や、今日や、明日のせいではないよ

久しぶりにクローゼットの奥から取り出した
あなたが褒めたお気に入りのTシャツには虫食いの穴が空いている
指で押し広げて覗いた先、カーペットの模様が見えた
思い出した記憶の顔は朧気だけれど、ひさしぶりに心臓が軋んだ


自由詩 百年先で待っててね Copyright 青の群れ 2018-03-16 16:34:32
notebook Home 戻る  過去 未来