近くはなっていく
竜門勇気


休みの朝に昼過ぎに目を覚ます
ねぼすけは世界の外側にいるし
自分の内側にいる

父がなくなって
その後祖母がなくなった
なくなり続けていく
消えていったんだろ
それが誰にでもある不孝の一種だと
納得はしている

休みの朝の古びた気配を
お互いわかってる
だから声をかけあうこともない
なにかが足りない
ちがう
足りない何かは分かっている
終わった物語を続けるとき
やらなきゃいけないことがある

まるで
眠さを隠して
爪を立てる猫
一人でいった
映画館の帰り道で
自販機に小銭をぶちこんでるみたいに

近くはなっていく
近いところに行きたいだけなら
歩けばいい
そこに行きたいときには
誰かの手を握ってなきゃいけない

休日の朝に目を覚まして
しなきゃいけないことを抱えて

どうして悲しんでるだけで
全て片付いてくれないのか

寝言だけで作られた世界の
泡の中に閉じ込められる

近くはなっていく
近くはなっていく
そっちのほうが満ちていく
どうして悲しんでいるだけなのに
色んなことをわからなきゃいけないんだろう
僕は博識になるために
泣いてるんじゃない


自由詩 近くはなっていく Copyright 竜門勇気 2018-03-13 23:23:16
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