遠景へつぶやく
塔野夏子

私をとりかこんでいた言葉たちが
あのときを境に
いっせいに遠ざかってしまった

遠景になってしまった言葉たち
とり残された私のまわりの
がらんどう

けれど私は
おそるおそるでも
呼びかけてみたい
遠景となってしまった言葉たちに
もう一度戻ってきてくれないか と

その声が届くのか
届くとして戻ってきてくれるのか
戻ってくるとして まずどんな言葉が

わからない
わからないけれど
私はまず小さくつぶやく
戻ってきてくれないか 言葉たちよ




自由詩 遠景へつぶやく Copyright 塔野夏子 2018-03-11 11:34:29
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