無題
しゃぱだぱ

  お爺ちゃん
 

真っ昼間
海辺の無人駅に一人座った
何のために来たのかも分からないまま
海が見渡せる方の端っこの古びたベンチで昼寝をした
陽が傾いて折れたような首元に柔らかい光が当たった
見飽きた、大事に育てた花の蕾を軽やかに摘まれる夢だった
悲しいとも思わなかった


風が少し冷たくなって
空と海の境界線に死んでゆく、鯨のような雲を見た
それは繰り返される陳腐な日常に成り下がっていると知った
雲から生まれた結晶はそれぞれの中にしか咲かないのだと知った
つまらないとも思わなかった


誰もいない
流れ星を見た
それは涙がつい、と頬に零れる速さの様だった
きっと忘れると思った

2018/3/11



  お兄ちゃん


ほら終わりと、情が優しく微笑みかける
しくしく泣いてもいないのにって
死の手招きをしているみたい
ほら日常と、情が優しく爪を立てる
壊れて千切れてもいないのにって
拳で叱りたがっているみたい

ここにもいないのに
どこにも行かない
どこかに行くこともせず
どこにも行けない振りすらできず
無いように隙間にもぐりこむから
毎日が陽だまりに死んでいる
残ってしまった空っぽの生

力むことも諦めることも忘れてただ世間を浴びている
反転してゆく感情を噛みちぎればしたたる事からも逃げ
ただ呆然と光に目を眩ませる


(でも生きているなら)


例えそれが正しい悪意の残骸でも疲労した錆びた優しさでも
朽ちる事なく情はあるから生きてゆけ

2018/3/11



  お姉ちゃん


ほら先に見えるよ

すっぴんの幸せ
どんな関係の煩わしさや自身のもろさにも
それはいつもある毎日に過ぎないから

めんどくさいな
決まり事ばかりの丁度よさなど
ばらまかれた水しぶきの全てを許せよ

枯れている事だって美しい
お日様の情にもたれ、枯れたから

けれど春の陽気に
あなたの思えるお日様色で花は咲くのよ

2018/3/11


自由詩 無題 Copyright しゃぱだぱ 2018-03-11 11:17:00縦
notebook Home 戻る