百代の過客
吉岡孝次

「樹齢」とあるが
墨で書いてあるから、先がかすれて読めない。
注連縄は幾重にも新しく
度重なる、史実に残る落雷に維管束をぶちまけながら
幹ばかりで、枝を短くひょろつかせた神木は
それでも春にはまた若芽を絞り出し
氏子の移り変わりにも特に興味を示さぬ風で
やっぱり幹ばかりで立っている。

「こればっかりは創れねえや」と思うことなく
敗北する。
ランチタイムの、よく晴れた旧街道沿いの一画で。


自由詩 百代の過客 Copyright 吉岡孝次 2005-03-18 20:57:09
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