199X年世界は核の炎に包まれた
TAT
1999年も終わろうとしているというのに
街は浅薄で非情で
僕らは岸に打ち上げられたレミングスのように
死に場所(ねぐら)を探していた
粗い冬の波が
灰色の空の下
何度も何度も砂浜を侵攻しては
退いてゆく
朽ちた木材と
カプコンのシールを貼った
プラスチック樹脂で積み上げられた
ゲームセンターの筐体で出来た
標高十数メートルの城が
そこには在って
潮や砂浜に常時 犯されていた
その頂で
君は形而上学的に笑っていた
ケンカばかりで
セックスが苦手で
ハーモニカとかオルガンとか
銀色の管を辿って流れてくる音によく心を動かされた
1999年の冬の自分の顔をまっすぐ見れるかどうかがひとつの基準だ
今もまだ
見られるか
ではない
見れるかどうかだ
それは
法律も文法も手の届かない絶対の理なのさ
1999年も終わろうというのに街は非情で
世界は核の炎に包まれていた
自由詩
199X年世界は核の炎に包まれた
Copyright
TAT
2018-03-08 14:33:17