夕餉のカイエ 
一輪車

米を研ぎ
五色の糸を
惜辞に合わせて刺繍する

水量を計り
嫌躁の、
白い地平を過ぎる風のシラブル

電気釜にセットして
月の片雲が翔ぶ水たまりのソラを
野良犬が歩む

スイッチを入れ
糸に操られて舞い上る
黄葉の譜

魚のぬめりをぬぐい
脚萎えの少女と
盲目の少年の童話を閉じる

水洗いし
瞼のしんにょうを
歩む

内蔵を割いて
雲の上に捨てられた鉄塔を
たずねる終(つい)のふたり

血合いを流す
星よりも高く聳える赤い都市
陶磁皿の上の 剣

みりんと醤油で煮立て
烏帽子のかたちをした剥製の背からのぞく
前線に 濡れる緑霞む森

夕食を支度する
雨だれの窓の下に
モーツアルトが眠っている


自由詩 夕餉のカイエ  Copyright 一輪車 2018-03-07 10:51:11
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