ひとつ さむさ
木立 悟






夜の下には現れない
白い色からのびる光
床に土に空に刺さり
細く細く動かない


赤い涙
まだ触れていない箇所を目に当てる
朝に止まる時計
左側の景の震え


虹色の砂鉄を架ける磁力が
波に散らされることなく到き轟き
名前の上に書かれた名前に
隙間なく羽と芽は生まれゆく


苦しさのあとのひとりと白さ
しあわせと遠さに親しい寒さ
離れては目を閉じ
尽きる涙


ひとつの巨きな雪の柱が
未明の空に廻っている
ひろがる腕は色に分かれ
白に触れては白になり
白に触れては降りつもる


信と不信のはざまの峰が
静かにほぐれ 溶けてゆく
朝の背中に重なる朝
明るさの無い光の雨


痛み 痛まなさ
かけら かけら
隠された名前が花にひらかれ
音に 音になり
音に 音に降る



























自由詩 ひとつ さむさ Copyright 木立 悟 2018-02-21 16:58:05
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