目覚めの薬
まーつん

目覚めの薬

始めたくない一日
ベッドの脇のギター

黙らせた目覚まし時計から
バトンタッチされたテレキャスター
僕にやる気を出させようと
甘い声で囁きかける

僕は布団の中から手を伸ばし
彼女の体に触れる、弦をはじく
昨晩から広げたままの譜面を
寝ぼけ眼で眺めて 覚えたての歌を鳴らす
つまずかないように、ゆっくりと

つまらない仕事、居心地悪い職場
丸まったまま棘を出したがる心を
無理に引き延ばして、薄い朝陽にあててやる
五線を泳ぐオタマジャクシを追いかけて
冷たい水を思い出した体が、いつの間にか目覚めてる

不機嫌なアンプが爆音を吐き出し
近所の雀を驚かせ、雨雲をたじろがせ
ゴミ回収車のアナウンスをかき消してくれる

そうして僕は 寝床から這い出す
逆立つ髪の毛、はだけたパジャマ
夢の中で発明を思いついた
いかれた科学者みたいに


カレンダーや箪笥や
ベランダの植木鉢が
そんなご主人を
あきれ顔で見つめてる


自由詩 目覚めの薬 Copyright まーつん 2018-02-11 16:39:55
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