少年漫画
1486 106

エスカレーターに乗っていたら
後ろから急に強く押されたんだ
相手は何かぶつぶつ言いながら
足早に立ち去ってしまった

はずみで割れたスマホを拾って
肩を落としたままホームを出た
自分も悪かったかもしれないけど
もやもやが胸に渦巻いていた

少年漫画の主人公だったら
こんな時何と言うのだろう
何度も読み返したはずなのに
必要な台詞が浮かんでこない

コーヒーショップで並んでいたら
知らない人が割り込んできたから
文句を言おうと声を掛けたけど
上手く言葉に出来なかったよ

告白するけど人生で一度だけ
不良に絡まれたことがあるんだ
完全な言い掛かりだったのに
勢いに負けて謝ってしまった

少年漫画の主人公だったら
こんな時どう戦ったんだろう
何度も読み返したはずなのに
必殺技の一つも浮かんでこない

公園のベンチで弁当を食べながら
ぼんやりと空を眺めたりしている
仕事や毎日は上手くいっているのか
自分でも自分のことが分からない

少年漫画の主人公だったら
どんな未来が待っていただろう
憧ればかりが大きくなっていって
心を置き去りにしてしまったんだ


自由詩 少年漫画 Copyright 1486 106 2018-02-01 08:05:03
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