穏やかな日々
ただのみきや

時間がとぐろを巻いている
浮き上がった夢のあぶくたち
潤んで灯る面差しの
確かめる間もない霧散
くすんだ灰の白い


昼と夜の満ち引き
時代の蒼天を舞う鳥の糞に汚れ
それすら拭い去る
塩辛い風と睦みながら
境界に在り続ける埠頭のように


孤独ということばに浸み込んだ
寂しさや人恋しさを絞り切り
洗い晒しのシャツように
得ることも触れることもない
あなたのかたちの空白を抱く


満たされなさに満足して
飴色の抜け殻が風に囁くように
ことばが拾い上げるものたちの
したたかな植物のような意図を
知らずに使役されているのか


どんなに晴れた日にもただ
一点の闇に目を凝らし
一本の燐寸の音に欹てる
無数の顔を漂わせ海は
どろりと球体へ閉じて往く


生まれ育った時代と和解したのだ
ひとりの女が過去から走って来て
追い付いてしまったから
渇き飢えている 意味よりも
歌声の媚薬と快楽に




        《穏やかな日々:2018年1月31日》








自由詩 穏やかな日々 Copyright ただのみきや 2018-01-31 20:22:04縦
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