ひとつ 痛み
木立 悟





瞳が何処かを巡っている
まばたきの度に新たに生まれ
暗がりに浮かぶ光の紋様
見つめては見つめては泣いている


吹雪 涙
同心円の羽の渦
ひらき ふるえ
問う


機械の作る水音が
窓の隅から入り込み
異なる器に満ちてゆき
異なる海に揺れている


風が言葉になるまでの
数十億年を曇に映して
凍りつづける足跡の列
行方知れない瞳の軌跡


低い雷光 無数の冬空
何も見えない隔たりのなか
廻す腕に絡みつくのは
誰かが名付けた午後の名前


痛みは昇る 軌跡は昇る
涙のなかに増えてゆくもの
地は燃え 火は皆
砕け 昇る


水の夜が水底を消し
どこまでもどこまでも沈むとき
火を見つめる瞳はひとつ
はばたきの渦にこだましてゆく

















自由詩 ひとつ 痛み Copyright 木立 悟 2018-01-22 09:02:59縦
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