北国の朝
ミナト 螢

白いホールケーキのような町に
シャベルで切れ目を入れたとしても
真新しい粉が空から降って
思い出を挟む間もなく積もる

傘も差せずに動いているなら
髪を白く染めてゆく雪の精
何十年も先の自分に会う
この町じゃ歳なんて分からないね

飲むのをためらう缶コーヒーで
凍える指を温めながら待つ
春色の靴に紐を通して
太陽の街へ出掛けてみたい

格好悪いと決め付けた長靴
消雪パイプの綺麗なおしっこ
踏んだり蹴ったり遊んだ頃の
足音がとても大きくなった


自由詩 北国の朝 Copyright ミナト 螢 2018-01-12 17:22:43
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