去音
木立 悟
十二月は
窓にいて
ためらいながら三月を見る
とらわれのわけを知る名前
葉と葉のはざまにある名前
遠い火の列
風を咲かせて
すぎてゆく列
知らない花 なびくよ
手をとり 歩くよ
さよならの花と一緒に
合わせ手の葉に
したたる花 したたる花
緑の火
窓に浮く窓
沈む窓
光の布を軽く噛み
十二月は雨を見る
とらわれの指と指は触れ
雨と雨のはざまは咲いて
互いに互いを呼びあいながら
滴は滴になってゆく
三月の窓の
ひとつひとつに十二月はいて
生まれる花に
葉の波に
午後の光の手を振りつづける