拝啓どろの沼より
木屋 亞万


こころは土ににている
人によってちがうけれど
すてきな人たちはふかふかで
たくさんの養分がある
種さえあれば芽を出して
大きいものや小さいもの
甘いもの苦いもの酸っぱいもの
何かが実ることだろう

だけどわたしのこころには
あるべき土がすくなくて
どろどろと沼のようになっている
種も芽もすぐに腐って埋もれてしまう
陽射しもうまく入らない
底なし沼のようなもの

だれかを好きになることは
心に家を建てること
柱ができてかべができ
あちこちに日々がかさなり
思い出が心の部屋を飾り出す
ちょっとやそっとの雨風は
心の家が守ってくれる

わたしの沼には
どうしても家はうまくたたなくて
誰かを想う柱を建てようとしても
傾いて沈んでいってしまう
うまく好きになれないのは
足場が不安定だからなんだろう

どうしてわたしは沼なのか
悩んだこともあったけど
沼には沼の良さがあり
今年はじめて花が咲き
蓮根が実りつつあるの


自由詩 拝啓どろの沼より Copyright 木屋 亞万 2017-11-25 22:52:28
notebook Home 戻る  過去 未来