空へ
乱太郎

 
母音がうつむいて部屋に籠る
空はもう投げ出された孤児となる
白い鴉の群れ

消費期限の過ぎた救命用具の欠伸が聴こえる
LP盤のレコードが針を探して
書きかけのままの日記帳

   おお空よ
   わたしをのせた空
   わたしを忘れてしまったのか
   いつからか!

戦争があった
遠い遠い遥か異国の地で空爆の断末魔
寝た子はもう起きない

   おお空よ
   人々の願う空
   もう見飽きたのか
   血に染まる大地と瓦礫の山を

無数の矢を飛ばす青い狩人
ストーンサークルはもう時の鐘を響かせない
ミトコンドリアの海に竜巻が起きて

    おお空よ
    歴史はもう戻らない
あなたの御手に委ねられ
もはや行きつくところまで
    


自由詩 空へ Copyright 乱太郎 2017-11-19 17:45:03縦
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