どうぞお食べ
若原光彦

わたしはきみに
食べものをあげたい
それもできるだけ
おいしいものを選んであげたい
おなじ食べものなら
おいしいほうがいいもの
すこやかなカラダに役立ったり
役立たなかったりしてもいい
きみはわたしの子供ではないのだけれど

またわたしはきみに
便利なものをいっぱい知らせてやりたい
便利なものは便利だから
むずかしいことが簡単になったり
つらいことがラクになったり
気もちわるいことが気もちよくなったりする
なにより便利なものは
使わないとしてもいじくりまわしているだけで
日が暮れてしまったりする

そしてきみは
銃にたまをこめる
わたしはきみに
その引きがねを引かせてあげたい
きみがそうするしかないとか
そうしたいのだとかであれば
そうさせてあげたい
そしてわたしはきみ以外のだれも
きみを止めたり追いかけたりするなと言おう
そんな認めは出ておりません
逆らわば罰します
ひとりも動くなと
わたしは神ではないのだけれど

それでは とひとだかりのひとりが言った
あなたはいったいなんなのですか

配達夫です
あまねくお伝えごとを
持ってまわっております

それを聞いていたきみが
ひょいと飛び出してきて言った
わたしもなれますか
わたしも配達夫になれますか

なれますよ
配達夫になんて絶対ならないと
つよく思い続けていればね


自由詩 どうぞお食べ Copyright 若原光彦 2017-11-14 19:15:10縦
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